舌や歯肉(はぐき)やほほの内側など口の中を覆う粘膜を口腔粘膜(こうくうねんまく)といい、この粘膜に発生する病気を総称して口腔粘膜疾患と呼んでいます。口腔粘膜はいろいろな原因で起こる病気が、見た目には一見、非常に似通った形にでる事が多くあります。
ウィルス・細菌・真菌によって起きた病気(感染症)にステロイドの使用は禁忌ですが、それらによってできた口腔粘膜病変も、ステロイドの良く効く口腔粘膜の病変(擦過傷や自己免疫疾患やアレルギー性の病変など)も見た目は良く似ていますが、治療の方法はまったく異なります。感染症にたいしては原因となる微生物に対する投薬(原因療法)を早急にしなければなりません。口内炎とは非常に漠然とした呼称で、きちんとした診断名ではないのです。
また、粘膜は皮膚と似た組織であるため、皮膚に発生する病気と同様のものが発生することがままあります。このような疾患としては扁平苔癬(へんぺいたいせん)や天疱瘡(てんぽうそう)などがあげられます。口の粘膜はからだの鏡と言える程その状態を反映します。貧血・糖尿病・消化器疾患・代謝障害・アレルギー疾患などの全身疾患のシグナルが先に口の粘膜に出る事も珍しくありません。口の粘膜に変化が起こったら、口腔粘膜を診慣れた歯科医を受診することが大事です。