矯正治療を行う時、永久歯を抜くという事をよく聞かれると思います。
矯正相談を行っていても「歯は抜かないで矯正治療はできませんか?」と聞かれる患者さんが多くいらっしゃいます。矯正医の側としても、大切な大人の歯はできるだけ抜かないで治療できたらと考えていますが、実際には9割方の患者さんが抜歯の適応になってしまうというのも現実です。
抜歯の適応になる患者さんで一番多いのが、歯が大きいか、顎が小さいため、歯が並び切らないケースで、前歯のがたがたの原因が、ほとんどこれにあてはまります。
簡単に説明すると、例えば電車の7人がけの長椅子は普通の体格の大人の方が座って丁度の設計になっているとして、これに“お相撲さん”の様な体格の方が7人座ろうとしたら、ひざの上に重なるなどして座るしかありません。無理に7人座るより1人立ってもらって6人で掛けるほうがすんなりと綺麗にすわれます。つまりがたがたのケースがこれで歯の本数を減らすということです。
歯の本数だけ多くて、咬めないがたがたの歯より、本数は少なくても、きれいに並んだ、良く咬める歯のほうが歯槽膿漏や虫歯の予防に効果的です。その方が結果的に老人になった時歯は残ります。
又無理に歯を抜かないで直して治療期間が長引いたり、仕上がりが満足にいかないよりは(出っ歯になってしまう)、抜いても短時間で綺麗に仕上がったほうが良いと思われます。最近、得に歯を抜く事に抵抗を示す風潮があり、本来は抜歯のケースを非抜歯で矯正治療をされる先生も増えてきている様です。
歯を抜かずに治す方法は大きく3つあります。1、親知らずを抜いて奥歯を後ろに移動させる。2、歯列を横に広げてスペースを確保する。3、歯を細く削る。これらの方法でスペースが確保できれば歯は並びますが、足りない分は前歯が前に出ます。口元が出るということです。通常1~3合わせて稼げるスペースは歯1本分(7mm)くらいで,歯並びの悪い方は12~3mm足りない場合が多いので、少し前歯が前に出ると思われます。
これでうまく行くケースは抜かなくて良いので、それに越した事はありませんが、やはり前歯が前に出てしまったり、後戻りをしてしまったりする可能性も高いと思われます。ケースによりうまくいくものといかぬものが必ずありますから、ただ抜きたくないという感情的な気持ちで決めるのでなく、御自分の場合はどちらの方がうまく綺麗に行く可能性が高いのか冷静に聞かれ判断されたた方が良いと思われます。歯は一生のものですから。
歯を抜く利点1、治療が早く終わる。2、治療後の安定が良い、後戻りが少ない。3,口元がしまる。
しかし、矯正医は全部が全部抜いたほうが良いとは思っていません。大切な歯です、できるかぎり抜かない治療を心掛けています。抜いた方が良い場合のみ抜歯の決定となります。患者さんにとって長い目でみて一番良い方法を、矯正医は診断を行い決定しています。診断結果を信頼していただけるのが本当はベストと思います。以下抜歯ケースを上げます。