A1.矯正治療の前には必ずアゴ(顎)の関節の検査が必要です。アゴの関節は下アゴの部分(位置的には耳の前)ですから、噛み合わせと密接に関係しています。そのため、歯並びや噛み合せの悪い人は、症状が無くても関節の悪い状態の人が多くみられます。噛み合わせを治す場合、アゴの関節は基礎部分なので、矯正治療が終わってから治すわけにはいきません。ビルを建てる場合と同じです。地盤を調べないでビルを建てることはありえません。地盤が軟弱であると建てた後でビルが潰れる可能性があるからです。
矯正で歯を並べる場合も同様で、関節の検査をして、関節と関節の間にある関節円板がズレているような異常がある場合は治療をし、安定したアゴの位置を得てから矯正治療を始めます。
基礎を考慮しないで歯を審美的に並べるだけでは、治療が終わってからかえってちゃんと噛めなくなったり、顎(ガク)関節症を引き起こしたりします。このため、矯正治療の時には必ずアゴの関節の検査が必要です。
A2.矯正治療では歯を抜くか抜かないかの質問をよく受けます。歯を抜かないのが上手な矯正治療ではありません。
歯を抜かないで無理してならべたために歯が噛み合わなかったり、矯正装置をはずしてから後もどりすることがあります。治療後に上下の歯がキレイに噛み合って並び、後戻りしないことが矯正治療の評価の対象となります。その為に大事なことは診断です。矯正治療の前には必ずアゴの関節の検査をします。
ビルを建てる時に土台を調べないでビルを建てることはできません。土台が弱いと建てたビルが潰れる可能性があるからです。矯正で歯を並べる時も同じです。必ず関節の検査をし関節に異常があるときは関節の治療をし安定した顎の位置を得てから矯正治療にとりかかります。
なぜなら土台を考慮しないで歯を審美的に並べるだけでは後々、後戻りをしちゃんと噛めなくなったり顎関節症を引き起こしたりします。その為矯正治療の時に必ずアゴの関節の検査が必要です。色々な検査や分析を行ったあと歯を抜かないと診断する場合、歯を抜くと診断される場合、外科矯正をすると診断される場合があります。
外科矯正治療と診断された場合は顎口腔機能診断施設の資格を有する矯正歯科診療所では矯正治療は健康保険でします。診断を誤ると良い治療結果が得られません。つまり診断が正しい治療のために重要な出発点です。
A3.子どもの受け口、いわゆる反対咬合の場合、まず子ども用の装置を入れて上下が反対になっている前歯の部分を治します。そして本格的な治療は成長が止まるのを待って永久歯がきれいに噛み合うように並べます。というのも、身長が伸びている間は下顎も成長しているため、治療中に下顎が成長し顎が出てきてしまう可能性があるからです。
つまり下顎の成長が止まった時が本格的な矯正の時期となります。早く矯正をすれば早く改善されるというものではなく、逆に成長後の治療を困難にしてしまうこともあるため、子どもの時期の治療は慎重であるべきでしょう。
成長が止まっても下顎が大きい場合は、外科手術を伴う矯正治療をすることがあります。口の中から行う手術なので顔に傷も残らず、顎口腔機能診断施設の資格を有する施設での治療であれば健康保険が適用されます。
A4.治療をスタートするタイミングは重要です。個々のケースで治療のタイミングは異なりますのでまずは専門医の診断を受けて下さい。どういった問題があるかを判断し、良いタイミングで治療を開始することが大切で、早ければ良いというわけではありません。
一番歯の動きがスムーズなのは11~13歳です。歯の状態でいうと、このタイミングが一番良いということになります。これは第2大臼歯が生え始めるころです。ただ、成長が止まる(上顎と下顎の位置関係が決まる)のが男性で18歳、女性で16歳ぐらいです。歯は顎の上で動くわけですから、歯を正確に動かす動的治療が終了した時点で成長が止まっていなければなりません。
本格的な永久歯の矯正治療が2年半程度かかるとするならば、あまり早く永久歯の矯正治療を始めてもよくないことになります。ただ、早期治療が効果的な場合もあります。
最近のスウェーデンの研究では5歳から8歳ですでに顎関節のクッション(ショックアブソーバー)の役割をする関節円板がズレている場合(顎関節症の始まりの状態)があると報告されています。私どもの診療所でも8歳で関節円板の前方転位が認められた症例で早期に顎の治療をしたことによりもとに戻せた症例があります。また原因不明の頭痛で学校を休んでいた子供がメディカルのドクターから私どもに紹介を受けて顎の治療をしたことにより頭痛が消失し、学校にふたたび通えるようになった症例も経験しています。
歯並びが気になったり、咬み合わせに違和感があって顎(あご)に負担があるようでしたら、すぐにご相談ください。また、成長が止まった成人の場合でも歯は動きますので、矯正治療は可能です。いつでもお気軽にご相談ください。
A5.歯を抜かない治療をうたい文句の本とか見かけることがあります。初めて来られた患者さんでここは歯を抜かないでなおしてもらえますか?とまっさきに質問されたりします。矯正科医の中でも歯を抜かないが流行した時もありました。今は下火です。診断で歯を抜いた方が良い結果がでると判明しているのにわざわざ悪い結果の道を歩めません。
歯が大きく顎が小さい。それを無理やり並べるためにどうするか。顎を広げてというごまかし文句があります。骨は簡単に広がりません。歯を並べるときにアーチをひろげます。無理やりでもよい。歯を並べる事だけが矯正と勘違いしてるわけです。土台からはみ出した歯は無理をかさねます。結果は目にみえます。不正咬合の原因は骨と歯のバランスにあります。原因があるから不正咬合になっています。原因から目をそらせて歯だけを並べるごまかしは正しい矯正ではありません。診断し原因をつきとめ、歯がきっちり噛む最善の咬合をとりもどすのが矯正治療の目標です。
A6.教科書的にいうと上と下の顎の骨のバランスが悪い。顎と歯のバランスが悪い。患者さんから噛む力が弱くて顎が発達しないのが原因ですか?指しゃぶりが原因ですか?
ときかれます。そうとはいちがいに言えません。逆が多く顎が発達しないので噛む力が弱い。顎のバランスが悪いために指しゃぶりをしたくなるのです。
上と下の顎の骨のバランスが悪い。上顎が大きすぎたりー下顎が大きすぎたりー下顎が小さすぎたりー上と下の角度が悪かったりずれてたりー上下とも顎が小さく歯が大きいなど骨のバランスの悪いために歯が不正咬合となっています。診断でその原因を調べるわけです。顎の骨と歯と顎関節の全てをみて歯を動かす。歯だけをみて並べることはできません。
A7.よくある質問です。私は初診は八才くらいからひきうけます。家を建てる際、土台が弱かったりずれてたら家を建てる危険性を知っているため土地の改善をします。
私達、矯正科医も弱い顎関節で歯を並べる危険を知っています。八歳くらいから顎の関節を痛めることがわかっています。最善な状態で歯をうごかせるように子供のうちにできる治療をはじめています。
八歳すぎているけど?とおもわれたかたも心配はいりません。来院されるとわかりますが子供さんから五十代の方までこられています。平均年齢は他矯正専門医院より俄然高いです。
矯正自体は何歳からでも可能です。何故年齢が高いのかと思うでしょう。実は矯正治療をする前に顎関節の治療をしている間に顎関節症で悩む患者さんが来院するようになったからです。顎関節症の痛みや症状をとりのぞいた後、再発をふせぐために安定した関節の位置で歯を噛めるようになりたいと矯正されてる患者さんがいます。矯正じたいは何歳でもできるので自然と二十代、三十代、四十代、など親子の来院もよくあります。
何歳から矯正をしたら良いかの質問には早く矯正装置を入れたら早くなおるんじゃないか?とか早くしたら歯を抜かなくすむんじゃないか?という過つた情報にふりまわされる人もいます。実は私も昔はふりまわされた一人です。
私が三十年前に医局に入った頃は成長期の子供達に帽子をかぶせチンキャップという顎を押さえ装置で顎の成長をストップするとまことしやかにしていました。それでも顎がでてくると装置の着ける時間が少ないからだなど患者さんのせいにしていました。
歯の軸をかえると口の中の装置で噛み合わせぐらいは簡単に変えれます。でも受け口が歯の軸で変えれないレベルまで骨が成長してくるアントニオ猪木タイプの患者さんもあらわれます。顎を装置で押さえても押さえててもでてくる。あたりまえです。身長が押さえつけても伸びてくるのとおなじです。身長は装置では止めれません。身長を押さえるため毎日、装置で頭を押さえたらどうなるでしょう。確実に首がおかしくなります。同じく顎を強く押さえる装置をつけてると顎の関節を圧迫しているわけです。顎関節症の原因をつくっつています。今では顎を押さえても骨の成長は押さえれないと昔の装置はつかわないのが常識となりました。
話はもどりますが土台となる関節のケアは早くに始めても、本格的に歯を動かす時期は極めて慎重です。骨の成長が止まってない時に装置を入れると、歯を並べている間に土台が動くわけで取りはずしができない装置を歯に長くつけなければなりません。つまり早く矯正を始めたから成長を押さえ装置も早くはずせたということはならないでわけです。本格的治療は成長がとまってからです。
A8.外科の診断がでても悩まれるかたもいます。まず欠点は手術をともなうこです。そのため一週間の入院が必要です。学生なら夏休み春休みに集中します。大人ならお盆や年末の頃ですね。顔が若干はれます。矯正は月に一度位の来院ですがオペ前とオペ後は来院の回が急に増えます。でも特別な例ですがドイツに留学してしまった患者さんが帰国を重ねながら外科矯正をやりとげました。日本にいるレベルなら来院は簡単なハードルです。
利点ですが顎の位置を正しくするのですから当然、顔のバランスがよくなります。そして土台が正しい位置にあるので歯はなんの無理もなくすんなり噛みあい後戻りしません。もちろん、歯を後ろで留め続け歯や歯茎を傷めることもなく健康な口腔を維持できます。顔のバランスは症例を見てください。顔のバランスもむづかしい分野です。(余談ですが私は若いときに<顔面のバランスと審美>というdrパウエルの訳本をかきました。待合室にあります。)
外科矯正は審美歯科でも美容整形でもなく顎の変形をなくし噛む口の健康のためにおこなわれるので健康保険の適応となります。
よく家を建てる話にたとえますが、家は何度も建てられません。強い土台に一生、使える住みやすい家を建てようと皆さんは真剣に考えますね。価格も気になります。強度も美しさも機能も技術力もと求めます。口は顔の前にあり毎日、ご飯を食べ、関節は動き続けている。その矯正に勧められて安易にとびつくべきではないのです。一生の付き合いになること、矯正を2度やれないことを肝に銘じ真剣な選択をして下さい。(余談ですが他医院で矯正をしたが後戻りし噛めなくなり二度目の矯正をされる方もいます。)
A9.下顎前突以外でも手術が必要です。上顎前突を例に説明します。著しい出っ歯であるとします。前歯がでてるだけでなく上顎全体がでている。あるいは下顎が小さくてひっこんでいる。その場合は歯だけで噛ませるのは無理があります。理由は土台が前後に外れてるからです。不正咬合はほとんどの場合、上顎骨と下顎骨の三次元的な位置関係のひずみが原因です。小臼歯などを抜歯してそのスペースを利用して骨格の不正を取り除く方向に臼歯を動かしながら奥歯をきっちりかみ合うようにできる程度の骨格不正では矯正だけで治療ができますが、矯正だけでは奥の歯がきっちりかみ合わない矯正してもあともどりするような骨格性の上顎前突は外科矯正の対象となります。外科矯正を選択して根本の原因を改善すれば矯正後のあともどりを劇的に少なくできますし、裏からワイヤーを使って接着剤を用いて歯を固定しなくても後戻りしません。一般的に行われている歯を抜いて少しひっこめ見栄えをととのえる。そのような矯正ではあともどりは防げません。外科がいやならしかたないですが、常識ではやはり、前後にずれた顎の位置を整え土台からの根本的な治療が正しいです。私も昔は手術が必要な顕著な出っ歯を矯正でならべようとしました。口の中にゴムをかけ上下の歯をひっぱる。噛ませようと必死。するとなんとなく治る感じに見えていますが、違います。矯正力に関節が亜脱臼して、つまり関節がはずれて無理にかんでいるのです。その結果はだれでもわかるように装置をはずすと後戻りする。顎がガクガクして顎関節症がでる。だんだんかめなくなる。2年もすればかなり後戻りします。