昭和37年4月10日生まれ
昭和62年日本大学歯学部卒業
日本歯周病学会会員
日本歯科補綴学会会員
アカデミーオブオッセオインテグレーションアクティブメンバー
何が大切なのか?
人の一生の中で、死ぬまで美味しいものを食べ続けられたらそれほど幸せことはありません。いつでも自分の食べたいものをたべていける、これは体の健康のみならず、心の健康を維持するためにもとても大切なことです。しかしながら、年をとって、この食べたいもの普通に食べられている人がどのぐらいいるのでしょうか。ここに残念なデータがあります。75歳以上の日本人の実に50パーセント以上が総入れ歯(上下の歯が14本近くもしくは14本抜けている場合の入れ歯)を入れているのです。先進国ではどの国でも同じようなデータなのですが、歯は抜けてしまうもので、そして、多くの方が一生涯美味しいものを食べ続けるという当たり前の幸せを享受できず、体と心の健康を蝕んでいるのが現実です。
ここでもう一度確認したいことは、高齢になっても美味しいものを食べていくために、とにかく歯をたくさん残していく努力をしようということが、何より大切だということです。
どのようなことで歯が抜けるのか?
大きく分けると虫歯(う蝕)と歯槽膿漏(歯周病)の二つになります。これに噛み合わせの力が加わるとさらに歯は抜けやすくなります。
虫歯で歯が抜けるのは、ほとんどが神経を取った歯で、歯が割れることにより生じます。歯は、神経を取ると10年から20年で枯れたような衝撃に弱い状態になります。これは、植物に例えると水を吸っていない木に似ています。歯も神経を取るときに、元々神経と一緒に歯の中にある血管組織(これが歯に潤いを与え、歯は噛み合わせの力で割れることはありません)も取ることになり、歯が脆くなってきます。先に書いたように10年、20年で歯は脆くなりますので、20歳台、30歳台で神経を取った歯は50歳台、60歳台で歯が割れるという代償を払わなければいけないことがあります。
歯槽膿漏は歯の根を支える骨が溶けていき、結果的に歯の抜ける病気です。家に例えると、家の部分が壊れるのが虫歯ですが、土地の部分がぬかるんで家自体が倒れるのが歯槽膿漏と考えていただければいいと思います。この病気は、ゆっくりと進行する病気です。多くの方が60歳ごろ発症するように思っているようですが、20歳代後半で80パーセント以上の方がすでに歯槽膿漏になっています。ですからなるべく早くこの病気を認知しそれに対処していかなければなりません。
噛み合わせの力は、虫歯と歯槽膿漏に大変大きな影響を与えます。これは、特に夜寝ているときにする食いしばりが問題です。この食いしばりはほぼ100パーセントの方がやっていると言われており、深い眠りと浅い眠りの間に一定時間やっていることがわかっています。食いしばりが強いと、神経のない歯は破折の危険性が高まり、歯槽膿漏では骨が 徐々に解けていきます。この食いしばりに対する処置も大変重要です。