本当はパイロットになりたかったんですよ(笑)。
あいにくと目が悪かったので断念しましたが、当時レーシックがあったら、今はまったく違った人生を送っていたかもしれません…。
きっと何か「資格」をもってする仕事というものに憧れがあったんですね。
それでいったん海外の学校に通ったんですが、その間に医療従事者への憧れが芽生えまして、幸い、数学と英語がまあまあ得意だったので、帰国後すぐに昭和大学の歯学部に入ったんです。
正直に言えば、さほど立派な志があったわけではありませんけれど、それでも勉強していくうちに歯科医療の奥深さというか、社会的意義のようなものに気付き、のめり込んでいきました。
大学では、歯学部卒業後に補綴科Ⅱ(現在は高齢者歯科の研究室)というところに入局してフルデンチャー(歯を全欠損した場合に入れる総入れ歯)を主とした研究をしました。
その後、この南町歯科医院を開設したのは、平成3年ですから、もう20年以上になりますね。
もともと自分が育った地域で医療を行えるということには、大変な充実感を感じています。
やはり、大学での研究と臨床上の「患者さんのニーズ」には、いろいろな意味で隔たりがあるものだなあと思いました。
恩師である補綴科Ⅱの山形先生が、フルデンチャーだけでなく、さまざまな部分症例をはじめ比較的自由に研究させてくれました。当時はインプラントが世の中に出たばかりだったのですが、「将来的には大きな流れになるから」と私に勉強をすすめてくれたのです。
顎口外裂など、形成外科領域の症例に対してインプラントを応用するといったケースもあり、非常に将来性のある分野だなと思ったことを覚えています。
いずれにしても、医学の勉強と実際の臨床というのは、どちらかが独立して機能するのではダメで、双方が同時進行的に動いていかなくてはいけないんですね。
医学上の重要な成果が単なる「研究」で終わってしまってはダメだし、臨床上の優れた成果も科学的裏付けがなくては意味がありません。
医療に携わる以上は、冷静で優れた研究者でありながら同時に「人の痛みがわかる」人間的な心をもっていなくてはならないことを学びました。
今、お話ししたことと関係しているのですが、「押し付けない医療」ということでしょうか。
患者さんにとっては、私達が当たり前のように使っている専門用語も意味がわからないはずですし、そういったものをひけらかしてもよい治療はできません。
まずは、いろいろな意味で目線を患者さんと合わせて「さあ、一緒に健康になりましょう!」という気持ちで接することだと思います。
近年よく言われることですが「医療は究極のサービス業」なのです。
そういう意味では私達が行う医療行為は、医師が独断ですべてを進められるものではなく、あくまでも「患者さんとの共同作業」であるべきだと思うのです。
もちろん、ときには患者さんをリードして、医師としての医師を貫く必要もあります。
ただし、そこには医師と患者さんとの間に絶対的な信頼関係がなくてはなりません。
そういった「よい関係」が築けたとき、治療効果は最大になるのだろうし、患者さんにとっても医師にとっても「よい医療」が達成できるのではないかと思います。
その上で、なるべくリラックスして治療を受けていただいたり、身体や心への負担が少ない治療をしていく……。
私は、できるだけ「抜かずに」ということを念頭においていますけれど、それも患者さんの負担を可能な限り少なくしたいという思いからです。
一度失った歯は決して戻りません。
まずは「いかに歯を温存できるか?」を考えるのは歯科医の使命でしょうね。
また、必要がない限り、保険制度をできるだけ活用した治療を提案していくといったところでしょうか。
白衣を着ているときは緻密で妥協が大嫌いですが、普段は案外、テキトーかもしれませんよ(笑)。
それに医師だって、ただの人間です。
私も人並みにファッションに気を使ったりしますし、旅行が好きで世界遺産を全部見たいなんて思っていたりもします。
いろいろなことに興味がありますから、患者さんとお話しするのも楽しいですね。
たぶん私は「人」が好きなんです。
人それぞれに違う人生や夢、そういうものに接するのはとても有意義なこと。
それをしながら、多くの人の健康維持をお手伝いできるのですから、今の仕事はとてもやりがいがあるものですね。
南町歯科医院院長:高橋勇(歯科医師・医学博士)
生年月日:1964年11月16生まれ
出身地:千葉県出身
趣味:旅行、映画鑑賞
子どものときになりたかった職業:パイロット(今でも飛行機が大好きです!)
経歴:
平成元年3月 昭和大学歯学部卒業
平成元年4月 昭和大学歯学部補綴科Ⅱ特別研究生入局
平成3年5月 千葉県蘇我にて南町歯科医院を開業
博士号取得論文:「Highly repetitive sequences and characteristics of genomic DNA in unicellular cyanobacterial strains」 (平成8年4月)
所属学会:
「SJCD(Society of Japan Clinical Dentistry)」
「日本顎顔面インプラント学会(Japanese Academy of Maxillofacial Implants)」