年に数回は受ける質問です。よく聞くと、ほとんどの場合は、学校の検診で不正咬合を指摘されたが、今は興味がない、大丈夫でしょうかというものです。これに対し、究極的には死に至るものではないと説明するとなぜか安心して帰っていかれます。竹を割ったようなさっぱりした話しで、それはそれでいいと思います。
あと少ないながら、”矯正治療をする意義”という根源的な事について訊ねられる場合もあります。これに対しては
・歯周組織の健康面
・審美(見た目の美しさ)面
に関する価値観についての話しになると思います。
矯正治療は唇顎口蓋裂や顎変形症を除いては国民健康保険の対象外です。つまり国から病気とは認められていないということを意味します。不正咬合は臓器の疾患ではありませんよということですね。これだけ財政状況の逼迫した我が国においてはこの認識は仕方ないかもしれませんが、不正咬合は虫歯や歯周病などのリスクファクターになる場合があるので、疾患予備軍ということもあるのです。
矯正治療をしなくても、定期的に歯科を受診して予防に努めていれば、歯周組織の健康という面で問題は大きくないと判断できる時もあれば、奥歯が内側に倒れ込んで咬み合わせが深くなり、歯周組織の予後について心配になるケースもあります。矯正治療をした場合としなかった場合でどれくらいの差が出るか、定量的な値をはじき出すのは困難なので、治療した方がベターであることに価値を見いだせるかどうかが鍵になると思います。
そしてもうひとつは審美面。審美的なことに関しては、社会的ニーズの変化も大きく関係してくると思います。歯は臓器から目鼻立ち扱いへと少しずつシフトしてきているのも確かです。欧米、特に米国、それから隣の韓国はこの意識は日本より高いように思います。歯並びは彼らにとって、人生の行方を左右するほどの社交術の根幹を為しているとさえ言えるので、ここに価値観を見いだしている人も確実に増えています。
余談ですが、アメリカのオーディション番組(アメリカンアイドル、アメリカンダンスアイドル,etc)などを見ていると、専門家から見ても見事な歯列のオンパレードです。比較的矯正治療が簡単な顎態をしている西洋人であることを差し引いても、すごいなあと正直思います。矯正治療中の出演者も結構いて、ダンスアイドルでは準決勝までずっと歯にブレースをつけていた人が優勝しました。決勝の当日、装置もとれて、応援していたこちらも別の意味でホッとしました。