現在の日本は景気低迷が長引く中でも未曾有の経済的繁栄と物質的豊かさを享受している時代と言えます。このような豊かさの中でも人々は、さらなる知的可能性と生活の充実を追求しようとしています。
知的可能性の追求によりヒトゲノムも解読され歯科分野を含め遺伝子診断、再生医療などゲノム医療は盛んに研究が行われています。
それらの技術は病気の診断・治療から食糧生産、さらに人間の生命観にまで大きく変革をもたらすでしょう。人間の寿命も加速的に延び、多くの病気が人類から追放されると、人は生活の充実を追求しようとします。
Quality Of Life(生活の質)、さらにはアンチエイジング(抗老化)を求めることは人間の自然な欲求なのでしょう。アンチエイジングという言葉はほとんどの場合、美容整形分野で取り上げられる事が多いかと思います。
歯科分野ではホワイトニングで歯を漂白したり、歯を失った方がインプラントにより自然な歯列を再現するということは外貌的・審美的にアンチエイジングです。
術前の歯にコンプレックスを持った方なら、治療により精神的なものにもアンチエイジングに大きく貢献するでしょう。しかし歯科でアンチエイジングを語る上で審美よりも大切な事があります。それは機能です。
私たちは虫歯や歯周病などの歯を失う原因をかなりの程度まで克服できるようになりました。
原因が明らかになり、正しい治療が行われれば、大部分の歯は失われずに済みます。
また口腔内感染が全身に悪影響を及ぼすことや、歯の過失から顎関節、そして頭部を支える頚椎そして全身へと長い時間をかけて人間は刺激を回避しようと調整を試みることなど、口腔内機能と内科、外科的疾患への因果関係も解明されています。
このことから、たかが一本の虫歯、一本の過失はおろそかには出来ません。
口腔内が正常に機能し、健康を維持するための基本的な動作である”食物を摂取する、対話する”という行為を維持することこそが本当のアンチエイジングだと私たちは考えています。
医療法人伸葉会 理事 田島 伸也