ふとした「キッカケ」が、良い習慣への扉を開くかもしれません。
歯科医療に携わってきて心から思うこと。
わたしは、北海道大学歯学部を卒業後、同大学院に進学し、歯周病と義歯の治療を専門に研鑽をしてまいりました。
1980年に開業し、「北海道大学 第一補綴学教室同門会」の理事長も歴任させていただき、35年間、歯科医療に携わってまいりました。
当院は“入れ歯の上手な歯医者さん”として、「安心」(マキノ出版)の入れ歯の名医全国リストでも紹介されました。入れ歯に関することはなんでもご相談していただきたいと思っています。しかしながら、義歯・入れ歯についてのエキスパートとしての側面から、多くの患者様の義歯・入れ歯を作ってきましたが、開業以来35年、ここにきて本当に痛感することは、「かけがえのない歯を失わないようにすることの大切さ」です。どんなに精巧な義歯・入れ歯も、自分の歯には絶対にかなわないのです。
長く歯科医をやってきた中において、「定期的にクリーニングやメンテナンスで通われている方」と「悪くなった時だけ来られる方」の“数十年を”、を見てきています。そのような年月の中で、ここにきて、本当にはっきりとしたことは、“定期的に通われている方と、そうでない方の、健康な歯の残る割合に、歴然とした差がついている”という事実です。定期的に通ってこられた方は、お年を召しても、口腔内の状態が良く、歯も残っており、悪くなった時だけみえられる方は、本当にどんどん歯を失ってしまっているのです。これは私の医院で、私の目の前で起こっていることであり、まぎれもない事実なのです。
歯科医療先進国、日本の現状。
欧米では、医療費が高いために、「悪くならないように通う」という習慣が常識となっていて、ほとんどの方が、美容室に通うのと同じように、歯のクリーニングやメンテナンスに、歯科医院を定期的に訪れます。しかし、幸か不幸か、日本においては、国民皆保険制度の完備により、医療費が安く済むのは良いことなのですが、それゆえに、予防意識が低くなってしまい、「非常に悪くなって、どうしようもなくなってから行く」というのが歯科医院となっています。実際、スウェーデンやアメリカでは80歳でも約15~25本の歯が残っていますが、日本では約8本しか残らないのです。これでは欧米と比べると、まるで歯科医療後進国のように見えてしまいます。
わたしは、これからも、歯を失ってしまった方には、これまでの技術を総動員して、失ってしまった歯を補うための義歯・入れ歯を作ります。しかしそれ以上に、「予防」という観点から、「歯科医院を、美容室に通うのと同じくらい、あたり前に通うところ」にしていきたいと強く思い、私一人の力は微力かもしれませんが、毎日、いらっしゃる患者様に、その重要性をお話しさせていただきたいと考えています。
あなたのかかりつけの歯科医院をみつけるために…
「キッカケ」は、歯石のクリーニングかもしれません。歯を白くするホワイトニングかもしれません。銀歯を白いセラミックの歯にしたいということかもしれません。虫歯ができてしまったということかもしれません。歯ぐきから血が出るようになってしまったということかもしれません。その「キッカケ」で開いた当院の扉が、かけがえのない自分自身の永久歯を、将来失わないように、一本でも多く残るように、「美容室に通うのと同じように歯科医院に通う習慣」への扉となるよう、そして、一人でも多くの方が、一日でも長く、一本でも多くの歯を残し、「自分の歯でおいしく食事を楽しめる」ように、歯科医であり続ける限り、一人でも多くの患者様に伝え続けていきたいと思っています。
生涯にわたって、健康な歯を維持する秘訣、わたしが、長く歯科医をしてきて、歯科医院を運営してきて、たどり着いた結論であり秘訣、それは「あなたのかかりつけの歯科医院をみつける」ということです。それが最善の方法であると考えておりますし、歯科会においても、近年になって、その結論が出てきていると言えるでしょう。
クラーク歯科 院長 田中 伸一