妊娠2~3ヶ月頃から、急激に増加した女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の影響により歯肉が腫れ、出血しやすくなります。また、唾液量の減少やつわりなどでセルフケアが妨げられることにより、口腔環境が悪化しやすい時期ともいわれています。かつてはこの時期に歯を悪くしてしまう妊婦さんが多く、「子供に歯の養分を吸い取られる」といった迷信が生れたのでしょう。
しかし現在では、適切なコントロールがなされていれば口腔環境が悪化することはないことが科学的に証明されています。また、口腔内の衛生状態が早産や心臓病の危険因子になるという報告や、虫歯予防に効果的といわれるキシリトールを摂取した妊婦さんは、しなかった妊婦さんと比較して、生れてきた赤ちゃんへの虫歯菌の感染が優位に少なかったという報告があります。
妊婦さんの口腔内のケアは、自分のためであるばかりでなく、これから生れてくる
赤ちゃんの口腔衛生をも左右する大切なものといえます。
産まれてすぐの赤ちゃんの口腔内には、むし歯の原因となるむし歯菌(ミュータンス菌)は存在しません。
しかし、生後 ヶ月ころより、生活を共にする家族の口腔内に住むむし歯菌が赤ちゃんの口腔内に感染・定着し、むし歯ができる口腔環境になってしまいます。
家族みんなで健康な口腔環境を実現するためには、お子さんだけをケアするだけでなく、お父様やお母様をふくめた家族ぐるみでのケアが不可欠です。
これから生れてくる大切ないのち・・・ ご妊娠中はなるべく体に負担をかけたくないものです。しかしご妊娠中であっても、どうしても治療が避けられない状況もあります。
現在、歯科治療に使用されるレントゲンや麻酔薬などで、お子様に重篤な影響が出たという報告はありません。しかし、治療に際してのストレスや痛みなどもホルモンバランスの変化を引き起こし、特に不安定な妊娠初期には軽視できない危険要因です。
したがって、あおぞら歯科クリニックでは、体調が落ち着いている安定期(一般に3ヶ月~7ヶ月を指します)には、必要な治療は行っても差し支えないと考えます。またこの時期には、積極的に歯科検診とクリーニングを受けて、口腔内を清潔に保つよう心がけたいものです。しかし、妊娠初期や後期は少しのストレスでも体調に大きく響く場合があるため、応急処置程度にとどめるべきでしょう。処置の内容や、実際の妊婦さんの体調は千差万別です。分からないことがあればいつでも私たちに相談してください。