歯は山と谷が凹凸になって必ず対になっている歯はきちんと噛み合うようになっています。
しかし、歯を抜いたり、不適切な形の冠を歯に被せたり、日常生活の癖等で噛み合わせが悪くなっていくと、特定の歯だけに過大な力が加わり、結果的に歯を支えている骨などの歯周組織に大きな負担がかかり、歯や歯周組織にダメージを与えてしまいます。このような状態の人の中には、咬合が悪いのを自覚していない場合もあるので、定期的なチェックが必要です。
噛み合わせの異常で、代表的なのが「顎関節症」です。
顎関節症の原因については諸説ありますが、多くの場合、歯の噛み合わせがなんらかの要因によりずれてしまい、下顎が不均等に動いて顎関節に負担をかけていることです。症状としては下記の症状がひとつ、もしくはいくつか重なって現れます。そのため、原因をよく確認し、その対策をとる必要があります。
1 あごが痛む
顎関節および周辺の頬やこめかみの痛み。口の開け閉め、食べ物を噛むときなど、あごを動かした時に痛むのが特徴。あごの動きに関係なく痛む場合は他の病気の可能性が高い。
2 口が大きく開けられない
正常な人は縦に指三本分入る(40~50㎜)が、指が2本程度(30mm)もしくはそれ以下しか入らない。
いきなり口が開かなくなる場合も、徐々に開きづらくなっていく場合もある。
3 あごを動かすと音がする
あごを動かしたときに耳の前あたりで「カクカク」音がする。「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった音の場合もある。症状が音だけの場合は顎関節症予備軍と言えるが治療は必要ないと思われる。
4 噛みあわせに違和感がある
あごの関節や筋肉に問題があると、あごの動きに変化が生じて噛み合わせが変わることがある。
急に噛み合せが変わったように感じるときは顎関節症の疑いがある。
5 口を完全に閉めることが出来ない
非常に稀だが、あごの関節内の構造の異常のため上下の歯列の間に隙間ができて、口が完全に閉じられなくなる場合がある。
・その他の症状
代表的な症状以外にも、顎周辺だけでなく全身の様々な部位に症状が現れることもあります。
頭痛、首や肩・背中の痛み、腰痛、肩こり、めまいなどの全身におよぶ痛み
顎関節部やその周辺の痛み
耳の痛み、耳鳴り、耳が詰まった感じ、難聴、
眼の疲れ、充血、流涙
歯の痛み、舌の痛み、味覚の異常、口の乾燥感
嚥下困難、呼吸困難、四肢のしびれ
「顎関節症」って何科にいけばいいの?と思われる方が多くいらっしゃいますが、歯科での治療が一般的です。。顎だけでなく耳や顔に痛みが出るので耳鼻科や整形外科などにかかったとしても、顎関節症の疑いがある場合は歯科の受診をすすめてくれるようです。
治療をしばらく続けても症状が改善しない、悪化する、といったような場合は、さらに専門医を紹介致します。
・現在の健康状態、既往歴、アレルギーの有無、常用薬物、関節や筋肉の状態など
・どんな症状があるのか 痛みの部位、どんな痛みか、持続時間、開口状態、雑音
・どんなときに症状が出るか
・生活習慣 食いしばりや歯ぎしり、偏咀嚼はあるか、頭痛や肩こり、寝つきはよいか、ストレスはあるか
・正しい姿勢をしているか 猫背などではないか
・顔貌は左右対称か 咬筋肥大はないか
・歯の磨耗、頬粘膜や舌に歯の圧痕はないか、かみあわせの異常はないか
・患者に触って、顔や首・肩などの筋肉の緊張や圧痛の状態、顎関節の圧痛・動き・雑音などを調べる
開口量、顎が前方や側方に動くかなどを調べる
X線で関節の変形などを調べる
上記検査を行い、症状を確認し、
症状の原因や治療計画をご説明します。
噛み合わせが顎関節症の原因なのか、その関係はまだわかっていないとされているが、噛み合わせの異常が原因となっていてそれを取り除くことにより症状の改善が見込める場合には、初期段階ではごく簡単な噛みあわせの治療を行い、治療の最後に最終的な噛みあわせの治療を行います。
ブラキシズムや癖など顎関節症の原因となる悪習慣やその背景をさぐり、本人に自覚させ、それらを取り除くように習慣づけるよう指導させていただきます。
痛みの軽減のために患部を温めたり冷やしたりします。
・開口や顎を動かす訓練をして口がよく開くようにしていきます。
・筋肉の緊張を緩和させるために行います。
スプリントという歯列を覆う装具を装着することで顎関節や筋肉への負担を軽くして歯ぎしりや食いしばりの害を緩和していきます。
痛みが強い場合に薬で炎症を鎮めたり、筋肉が痛みで固まっている場合に筋弛緩剤を用いたりします。また夜間の歯ぎしりや食いしばりを抑えるために入眠剤、痛みの軽減のために抗不安薬、抗うつ薬を使用する場合もあります。
その他の治療で症状が改善されない場合には外科療法が必要になる場合もあります。